メインのコンテンツ
物理学ライブラリ
コース: 物理学ライブラリ > 単位 3
レッスン 1: ニュートンの運動の法則ニュートンの運動の第 1 法則とは何ですか?
これは慣性の法則とも呼ばれています。これは運動について理解するために最も重要な事柄です。
なぜ物体は遅くなるのでしょうか?
ガリレオとニュートン以前には,多くの人々が,,物体が遅くなるのは物体に遅くなるという自然の性質があるからだと考えていました。しかし,それらの人々は地球上で物体の速度を変える多くの力 — たとえば,摩擦力,重力,空気抵抗など — については考えていませんでした。もし私たちが恒星間の深宇宙にある物体の運動について観測できたとしたら,外力の影響を全く考えずに物体の運動の自然な性質を観測することができたかもしれません。恒星間の深宇宙では,ある物体がある速度を持っていた時,その物体の運動を変化させるような力がかからない限り,私たちはその物体が同じ速度で動き続けることを観測できたでしょう。同様に,もしある物体が恒星間の深宇宙で静止していた場合,その物体の運動を変化させるようなある力がかからない限り,その物体は静止の状態を続けるでしょう。
以下のビデオで,国際宇宙ステーションの中の物体は力が働かない限り,静止の状態のままか,宇宙ステーションに対して一定速度を保っているのが見えます。
物体はその速度を力によってのみ変化させるという考えはニュートンの運動の第 1 法則にまとめられています。
ニュートンの運動の第 1 法則: 物体は正味の力がその物体に働かない限り,静止状態であればその静止状態を続け,または運動中であればある一定速度でその運動を続けます。
ここで「続ける」という動詞が法則中で 2 回繰り返されていることに注意して下さい。この法則は「運動は現状維持される」というふうにも考えることができます。ニュートンの運動の第 1 法則は速度の変化 (方向や大きさの変化) があるのは,何か原因があるからだということを言っています。その原因とは正味の外力です。テーブルの上や床の上を滑っている物体が遅くなるのは,その物体に作用する摩擦力という正味の力があるからです。しかし,エアーホッケーのテーブルの上では,パックが空気の流れでテーブルに触れないようになっていますので,エアーホッケーのパックは何か力が作用しない限り,ほぼ同じ速度を保って運動をします。ここで作用する力というのは,たとえばテーブルの壁にぶつかってはね返るときに働く力です。
力が働く,外部の力,正味の力とはそれぞれどういう意味ですか?
力とは,ある物体が他のもう一つの物体を押したり引いたりする作用です。力 F の単位はニュートンと呼ばれ,シンプルに start text, N, end text とも書かれます。
外力とは物体の外部から生じている力で,物体内部から生じている力ではありません。たとえば,地球が月に作用する重力は,月にかかる外力です。しかし,月の内部のコアが月の外殻に及ぼす力は月の内力です。ある物体の内力はその物体の全体についての運動を変化させる要因にはなりません。
\Sigma, F と書かれるある物体にかかる正味の力は,その物体にかかる力全部のことです。もしある物体に多くの力が作用しているとすると,正味の力は全ての力をたしたものになります。しかし注意してください。力 F はベクトルですから,正味の力 \Sigma, F を求めるためには,力はベクトルとしてたさなくてはいけません。その時にはベクトルのたし算を使います。
他の言い方をすれば,もし冷凍のブリトーの箱に右側に向かって 45 ニュートンの大きさの力が作用していて,左側に向かって 30 ニュートンの大きさの力が作用しているのであれば,水平方向の正味の力は次のようになります。
ここでは右方向を正の方向と仮定します。
ニュートンの運動の第 1 法則は,もしある物体にかかる正味の力がゼロであれば (\Sigma, F, equals, 0),その物体は 0 の加速度を持つと言っています。これはこの物体が静止状態にあるとは言っていません。これはその物体の速度は一定であるという意味です。言い換えれば,一定の 0 の速度であるか,0 ではない一定の速度ということです。つまり静止している (速度 0)か,一定の速度で運動していることになります。
冷凍ブリトーの箱について言えば,もし右方向の力が 45 ニュートンの大きさを持っていて,左方向の力が 45 ニュートンの大きさを持っていたのであれば,正味の力はゼロになります。このブリトーの箱は,もしこれらの力が作用する前にもうある速度を持っていた場合には,その一定の速度で運動を続けます。または,もしこれらの力が作用する前にこの箱が静止状態にあった場合には,この箱は静止状態のままでしょう。
質量とはどういう意味ですか?
ある物体は,静止状態であれば静止し続け,一定の速度を持つ場合にはその一定の速度で運動を続ける,という性質を持ちます。これを慣性と言います。ニュートンの運動の第 1 法則はよく慣性の法則とも呼ばれています。私たちの日常の経験からわかるように,ある物体は他の物体よりもより大きな慣性を持ちます。例えば,巨大な岩を動かすのは,バスケットボールを動かすよりもずっと難しいです。
ある物体の慣性はその質量で測られます。ある物体を加速するのがどれだけ難しいかということでその物体の質量を決めることができます。より大きな質量を持つ物体は,それを加速するのがより難しくなります。
また,おおまかに言えば,何かより多くの「もの」,または「物質」があれば,より多くの質量があります。そしてより多くの質量があれば,その速度を変える (加速させる) のがより難しくなります。
ニュートンの運動の第 1 法則を含んだ問題の解説付きの解答はどんな感じのものになりますか?
例1:宇宙探査機の漂流
ある宇宙探査機が恒星間の深宇宙を右方向に一定の速度で漂流しています。ここには惑星や恒星の影響がありません。そしてこの探査機のロケットエンジンは停止しています。もし 2 つのロケットスラスターの両方が図に示すように同時に,同じ大きさの力で右方向と左方向に作用したら,この宇宙探査機の運動はどのようになりますか?
a. この宇宙探査機は一定の速度で運動を続ける。
b. この宇宙探査機の速さは増加する。
c. この宇宙探査機の速さは減少し,やがて停止する。
d. この宇宙探査機は即座に停止する。
b. この宇宙探査機の速さは増加する。
c. この宇宙探査機の速さは減少し,やがて停止する。
d. この宇宙探査機は即座に停止する。
正解は a です。ニュートンの運動の第 1 法則によれば,ある物体の速度を変化させるためには 0 ではない正味の力が必要です。この宇宙探査機にかかる正味の力は 0 です。なぜなら,宇宙探査機にかかる力は打ち消しあっているからです。ですからこの宇宙探査機の速度は変化しません。
例 2: エレベーター
以下の図に示されているようにあるエレベーターがケーブルで一定速度で上方向に引っ張られています。エレベーターが一定速度で上方に動いている間,ケーブルによってエレベーターに作用している力の大きさ—start color #e84d39, F, start subscript, c, end subscript, end color #e84d39—はエレベータにかかる重力による下方向の力—start color #1fab54, F, start subscript, g, end subscript, end color #1fab54—の大きさと比べてどれだけでしょうか?
a. start color #e84d39, F, start subscript, c, end subscript, end color #e84d39 は start color #1fab54, F, start subscript, g, end subscript, end color #1fab54 よりも大きい。
b. start color #e84d39, F, start subscript, c, end subscript, end color #e84d39 は start color #1fab54, F, start subscript, g, end subscript, end color #1fab54 と等しい。
c. start color #e84d39, F, start subscript, c, end subscript, end color #e84d39 は start color #1fab54, F, start subscript, g, end subscript, end color #1fab54 よりも小さい。
d. start color #e84d39, F, start subscript, c, end subscript, end color #e84d39 はエレベーターの質量によって start color #1fab54, F, start subscript, g, end subscript, end color #1fab54 よりも大きくもなり,小さくもなる。
b. start color #e84d39, F, start subscript, c, end subscript, end color #e84d39 は start color #1fab54, F, start subscript, g, end subscript, end color #1fab54 と等しい。
c. start color #e84d39, F, start subscript, c, end subscript, end color #e84d39 は start color #1fab54, F, start subscript, g, end subscript, end color #1fab54 よりも小さい。
d. start color #e84d39, F, start subscript, c, end subscript, end color #e84d39 はエレベーターの質量によって start color #1fab54, F, start subscript, g, end subscript, end color #1fab54 よりも大きくもなり,小さくもなる。
正解は b です。もしもエレベーターが一定速度で運動している場合,そこにかかる正味の力は 0 でなくてはいけません。エレベーターにかかる正味の力を 0 にするためには,上方向の力と下方向の力がちょうど打ち消しあってキャンセルされる必要があります。
例3:宇宙探査機の経路
ある宇宙探査機が恒星間の深宇宙を右方向に一定の速度で漂流しています。ここには惑星や恒星の影響がありません。もし,図に示すような方向でロケットスラスターを一瞬だけ点火して停止した場合,スラスターを停止した後の探査機の運動の経路を一番よくしてしているのはどれでしょうか?
a. 経路 a
b. 経路 b
c. 経路 c
d. 経路 d
b. 経路 b
c. 経路 c
d. 経路 d
正解は c です。ロケットスラスターを停止した後,この宇宙探査機には正味の力はかかっていません。正味の力がゼロであれば,その速度—大きさと方向の両方—は一定でなくてはいけません。ニュートンの運動の第 1 法則によって,この宇宙探査機は一定速度で直線上を進みます。この宇宙探査機に垂直方向に作用した力はこの探査機の水平方向の速度には影響しませんから,この力は垂直方向の速度のみを変化させます。すると一定の垂直方向の速度と,一定の水平方向の速度を持つことになり,それはこの図では宇宙を通る斜めの直線になるでしょう。